以前のブログ『旅立ちの演出』にも記しましたが、
私は度々、ご高齢者施設で「お看取り」にご一緒させていただくことがあります。
この日も、旅立ちの準備に入られるK様の居室に伺う機会をいただきました。
K様は本当に男らしく、頼もしく、潔い方だったそうです。
居室には、お歳の離れた奥様との写真がたくさん飾られており、
その奥様は、K様のお誕生日の度に「私より先に逝かないでね」と、何度も何度もお願いをしていたそうで、
K様はちゃんとそれを守られたのです。
またスタッフが「前に一度、私、K様と喧嘩したことがあってね。そのあと、K様が『さっきは言い過ぎた、ごめん』て言ってきてくださって」と。
「なんて人間味溢れる男性なの!」「そういう潔い方、素敵よね☆」と、
K様の居室で女3人、思わず黄色い声を上げました。
また、居室には、奥様と様々なところに旅行をされたアルバムが几帳面に並べられていて、
特に沖縄のアルバムには私も釘付け(私も沖縄大~~好き)。
本当に奥様のことを大事に大事になさり、2人の時間を大切に過ごされてこられたことがよく伝わってきました。
私は沖縄の曲や、K様がお好きだった曲を何度も弾いて差し上げました。
意識はもうおありではないかもしれませんが、お耳は聞こえていらっしゃるはずです。
安心して旅立ちのご準備をされるときに、その方のお好きな音楽は、どんな言葉よりも優しく包み込むのでしょうね。
K様は、この数時間後、翌早朝にご逝去されました。
その日は、なんとK様の95歳のお誕生日。
ご自分が生を受けた日に、その95年後の当日に、天に、奥様のもとに旅立たれたのです。
K様の居室で、スタッフ達とK様の様々なエピソードを話したり、
アルバムを眺めた時間は、決して悲壮感はなく、お部屋全体が温かく、その空間だけ穏やかな時間が流れていました。
スタッフの方が「この時間というのは、私たちスタッフもその方にしっかりと向き合ってお別れができる機会になっていて、
思い出話をすることで、気持ちが整理できたり、後悔しないお看取りになるんです」とおっしゃっていました。
その方の尊厳も守り、最高の旅立ちの演出だと思います。
介護士という立派な資格をお持ちの方を、私は心から尊敬しています。
そのような方々と日々ご一緒させていただく機会があることに、
心の底から感謝の気持ちと、自分の職に最大の誇りを持っています。
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